でしょうね?

つい、でしょぉ〜と口遊んでしまう40代オネエ。日々雑感と自由研究を公開します。時々暴言が出ちゃうかもだけどご愛敬。

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最後のさようならのために

旦那の父が緊急入院した。敗血症だという。当初は入院して良くなるだろうということだったが、日に日に症状が悪化、集中治療室に入るも腎臓、肝臓、ついに肺機能まで低下し予断を許さないということで旦那はヨーロッパへ緊急帰国した。入院してからたった2日間の出来事だった。敗血症、私自身調べてみたけれど危ない。もう旅立ってしまうかもしれない。そう思った。

旦那が会社へ書いたメールの抜粋

「私は最後のさようならのためにすぐに母国へ帰ることにしました。間に合うことを願っています。」

これを含むメールのスクショが送られてきて、この内容を会社へ送ることが問題ないか日本語チェックを頼まれたのである。旦那はチェックインを終えてゲート付近でこのメールを作成し私は終電で帰路であり電車の中で拝読した。ここ数日、私がしっかりしなくてはいけないと思って平然を装って過ごしていたが突然涙が止まらなくなり電車を途中下車した。ずっと涙を堪えていたのがもう耐えられなくなった。旦那は気丈にも見送りの時は泣かずに別れた。目は潤んでいた。きっと私と同じ気持ちだったんだと思う。自分の親なのだからもっと辛いはずだ。それでも彼は泣かずに出発した。

最後のさようならのために

旦那のヨーロッパの実家を訪問し旦那のお父さんと初めて私と会った夜、お父さんは泣いていたらしい。息子がゲイだと知ってはいたけれど、パートナーを連れてきて紹介されていろいろなことを感じたのだろう。しかし2回目以降は息子である旦那と同じように接してくれて、言葉の壁はあるもののいつだって私は元気かと気遣ってくれた。そんな私もビデオ電話するたびにお父さん元気かと挨拶したものだった。そんな日常がずっと続いて、いつの日か私たちが正式に結婚をするパーティーなどには参加して欲しいと願っていた。今この記事を書きながらまた涙が止まらないのである。けれどこの思いを何かに残したくて書き綴ることにした。

私にできることはなんだろうかと考えながら、もっとも早く帰省できる便、必要書類、各国の出入国規定を調べたりしてその午前は終り、どんなルートで向かうか分からないのでPCR陰性証明を取得し、そして夕方航空券を手配した。羽田発の深夜便ヨーロッパ行きである。これに乗ると乗り継ぎも短くとにかく早い。

最後のさようならのために、きっと彼自身間に合わないかもしれないそして、心の中でもうダメかもしれないと悟っていたんだと思う。私にはただ祈ることぐらいしかできず。そしてただ、涙が出る。道端を歩いていて突然涙が流れるのである。

気の許せる友人に今回の話をしたらとても元気付けられる返事をいただいた。

「旦那さん一番辛い時かもしれないけど、でもこうしてあなたがいてくれることでどれだけ助かってるかと思う。こんなふうに彼のお父様のこと、そして旦那さんの気持ちを思って泣いてくれるあなたがいてくれること。何よりも力強いと思う。あなたの気持ちは絶対にお父様にも届くはず。ゆっくり休んでといってもあなたのことだからきっと心は休まらないと思うけど、しっかり食べて休める時はゆっくり休むのよ。」

「話はいくらでも聞く、どうか旦那が到着するまでに持ち堪えられますように。あなたがそばにいることは支えになっているわ。そして出発する判断は正しいし間に合うことを祈る。」

今の旦那に出会ったことにも感謝しているし、こんなメッセージをくれる友人に恵まれ本当に幸せ者である。旦那のメッセージそして友人たちからのメッセージ。ますます涙は止まらないがとにかく間に合ってほしい。あと5時間で病院に到着する。

つい命はいつまでも続く。家族とはいつでも会える。そう思いこみ日々を過ごしがち。けれど遠い海外に住む場合はそうもいかない。私の家族は皆、近くにいる。そのありがたみを改めて感じた。そうではない旦那の気持ちを考えると本当に辛い。

便を手配したあと、出発してしまったらいつ帰ってくるか分からない、帰国が遅くなったら会社に怒られるだろうか。帰国しても隔離期間があるから在宅になり迷惑をかけないか。

一喝した。あなたの父さんは一人だけなんだから今すぐに帰りなさい。パッキングしなさい。そしてそれが原因で不当に扱われたら転職すればいいし解雇されたら私の収入で細々と暮らせばいい。

そんなこんなで出発して家には私一人。寂しいなと思う反面、旦那には満足のいくまで家族と過ごしてほしい。私の家族は日本にいるけれど、日本に旦那の家族はいない。そもそも年末年始に帰省する予定だったけれど、在宅勤務して日本時間に働けばいいのだからいっそのこと年明けまで過ごしたら?と連絡した。そんなことしたらあなた(私)が寂しくないかというが、そりゃ寂しいけれど今回はそんな寂しさとは比較できない事態である。私自身も帯同したかったがそもそも正式な婚姻関係にないし旦那の国へはビザがないと外国人は帰省できない。大使館でパートナーと認定してもらえば良いというが同性パートナーシップも何もしていないのでダメだろう。

今日も願って寝ることにする。どうか回復して元気になってほしいと。